134GHz帯 無線機の製作(MMIC方式)
 
By JH3OZA
  2023年 1月

(実験終了後順次追記します)

  最近になって面白いMMICが世の中にあることを知り、サンプルを取り寄せ実験しました。
 134GHz無線機を製作するにあたり、主要部品(PA,LNA,発振器,分周器,MIX等)がこのMMIC内に
 入っており、取扱う周波数が2GHz帯でとても低く、134GHzの無線機が作りやすいのです。
 このMMICの用途は、ミリ単位の液体流量(速度と距離測定)や厚み測定、バイタルサインの計測にも
 使えるように開発されたもののようです。

 1) SiliconRadar社の120GHzトランシーバー(MMIC)とその評価ボード
 
 (2022年11月 マイクロウェーブ展パシフィコ横浜にて撮影)

  このTRA_120_045(MMIC)は、120GHz用ですが、134GHzまで動作しますので、
 135GHzアマチュアバンドの下限周波数を使うことができます。
 ただ、稀に134GHzまで伸びていないものもあるようですが、期待できるので購入してみました。

 2)TRA_120_045 MMIC 内部ブロックダイアグラムと本体

  スペック
  1.TRANSCEIVER MMIC
  2.FREQUENCY RANGE (MIN/MAX) : 113.9 GHz - 134.1 GHz
  3.Transmitter output power :  -3dBm(EIRP) average value
  4.RX conversion gain : +11.5dB
  5.Noise figure (DSB) : +9dB (122GHz)
  6.SUPPLY VOLTAGE : 3.3 V, CURRENT CONSUMPTION : 166 mA
  7.PACKAGE : QFN 32 (5 x 5 mm)

  

 3)既製品のQFN-DIP変換基板にTRA_120_045(MMIC)を取付け
   (この基板に取付け場合,偏波面が垂直ですので45度ケースを回転させて取付けること。)
 134GHzモジュールの製作
  No1モジュール
 
     

  No2モジュール
  
  No3モジュール
 
  No4,No5モジュール
 
  No6モジュール
 
   RFモジュールは、MMICを既製品基板QFN32(5x5mm)に(一部の基板 9x7もある注意が必要)
  半田付けしてシールドケース内に収め、他の必要な信号線は貫通端子とSMAコネクターを用いて
  取り出しています。
   また、134GHzの電波は、MMICのモールド内に送受信アンテナが収蔵されているため、
  MMIC上部に内径2mmのパイプを近づけて134GHzの信号を取出しています。

   こんなガラエポのプリント基板で134GHzの信号が扱えるなんてビックリです。
  昔の真空管ラジオ(ゲルマラジオかな!)を作っているような感覚です。
   スペアナの外部ミキサー損出を40dB(CL=30dB別)とすると、出力が-7dBm程度と推定されますが、
  メーカー規格 0dBm (130GHz)からすると、取出し方法が少し悪いのかもしれません。

 4)試作機の組立
 ★主要部品
   1)134GHz MMIC ユニット(3項の製作品)
   2)ADF4156 PLL (アナログデバイス製)ユニット
   3)PIC(マイクロチップ・テクノロジー社)ユニット
   4)10MHz オーブン発振器・逓倍器
   5)DC-DC電源回路
   6)PICプログラム 自作ソフト

  ・ブロックダイアグラム
  
 ★試作機の測定風景
   134GHz MMIC (モジュール)の出力は(134.08GHz);-10dBm
   PLL回路には、RF=2095MHz(134.08GHz/64)をRef=40MHz または、60MHzでロックさせている。

 1)RFモジュール & PLL & PIC 


 2)パワー測定中 1


 3)パワー測定中 2


 ★PLLのループフィルター オペアンプなし出力波形
  ◎HP8566Bにて測定
  2.095GHz(1/64)の信号              134GHzの信号波形 Span:1M
  

   134GHzの信号波形 Ref:40M           134GHzの信号波形 Ref:60M
  

  ◎HP70000シリーズにて測定(2023/2/19)
  

 ★オペアンプ付加した時の出力波形
  ◎HP8566Bにて測定
   

   リップル分が取りきれていないが、ノイズレベルが5dB程度良くなりました。
  多少、134GHz信号の山がふらついています。(フェイズノイズが多いためか、
  このチップの可変周波数(f/vが大)が広いためか。)
  134.08GHzでFM送信して、受信時ローカル発振を134.016GHzにすると、IFは64MHzで復調ができます。
  

  ◎HP8565Eにて測定(2024/02/18)
  ループフィルターの調整でフェーズノイズが大分良くなってきました。
 

   また、搬送波をCW送信できるようにプログラムを変更すると、受信帯域巾が狭くなり
  フェイズノイズが低く、到達距離を延ばすことができます。 チャレンジ!。
  1号機と2号機アンテナなしの導波管のみで50mほどの通信ができました。
  チップの個体差があり送信出力も数dBの違いがあります。

 ★受信感度測定
 
   S9+ : 約-95dBm
   SQ ON : 約-120dbm
   ビートON : <-125dBm 測定限界
    誤差±5dB程度 多し

 ★134GHz 無線機
  No1無線機と内部
 

 No2無線機と内部
 

 
 No3無線機と基本パーツ
 

 No5無線機と基本パーツ
 
 
 No6無線機と基本パーツ
 
  RFモジュールとPLL回路、及びANTの取り出し方法で、この無線機の性能が決ります。
 しっかりしたシールドケースに入れ綺麗に作り上げました。
 特に、部品点数が少なく小型で簡単に持ち運びができ、5Vモバイルバッテリーで運用できるようにしました。

 ★パラボラアンテナの簡易ゲイン測定
 送信側 (周辺に障害物の少ない場所)
  
 受信側
  標準アンテナ(15dBiタイプ)             Φ30カセグレンアンテナ
 
  送信機とDUT(受信側)との距離(R>2d/λ*λ)を150m離しました。(平行電波を得る工夫は行っていません。)
 標準アンテナ(15dBi)と同じ感度になるように、カセグレンアンテナに変更しアッテネータ(ATT)を入れ計測。
 このΦ30カセグレンアンテナのゲインは、
 標準アンテナ(15dBi) + ATT(20dB)= 35dB 程度です。すこし効率が悪いかも。
 開口面積がそこそこで、この程度のゲインでよしとします。

 5)実験風景
  
  ・2023/4/9 大田区 多摩川 六郷土手にて移動実験

 
  ・2023/5/27 大田区 多摩川 六郷土手にて移動実験(500m)

 
  ・2023/6/7 大田区 多摩川 六郷土手にて移動実験(1km S59)

 
  ・2023/11/12 大田区 多摩川 大師橋-六郷橋間(約3km)移動実験(S+)

 
  ・2023/12/3 埼玉県 谷中湖ー太平山(約15km)移動実験




DE JH3OZA   令和 5年 1月


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